身代わり王子にご用心

創立記念パーティー






「あれ、聞いてませんでした? 今晩開催のパーティーに行くから、今日は元からお休みになってますよ~」

「……は?」


その日の朝。藤沢さんがさりげなく出した話は、私にとってまさに青天の霹靂だった。





風邪で1週間休んだ後に出勤したのは、配置替えされた食品売り場で。朝礼では店長から直々に担当変更の話をされた。監禁事件については、来週の社報で出るだろうとのこと。


一階の責任者である村井フロア長からはよろしく頼むよ、と肩を軽く叩かれた。


「今まで雑貨だったから違いに戸惑うだろうけど、基本は同じだからね。あまり焦らずにマイペースで覚えてくれれば良いから」

「そうですよ。私もたまに生鮮食品を手伝いますから、解らなかったらどんどん訊いてくださいね」


製菓とパン担当の藤沢さんが心強い宣言をしてくれて、ホッと出来た。恥ずかしながら生鮮食品の扱いは研修以来勉強してないから、昨夜はマニュアルを引っ張り出して読み込んだんだった。


食品売り場はレジ専門のパートアルバイトも多いけどどの人も気さくで、理由もなく敵意を向けて来ることはない。


数日も経つとすっかり周りに馴染んで、休憩時間にはポツポツと喋れるようになってきた。
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