秘密が始まっちゃいました。




「大変だったってね~、総務は~」


その日の夜、神楽坂のタイ料理屋で向かい合ったのは、同期で仕入れグループの真壁瑠璃(まかべるり)だ。

飯田橋に会社があるので、私と瑠璃の定例会は大抵神楽坂か、帰路の途中の新宿になる。


瑠璃は同期の中で一番仲がいい。
ゆるふわカールのミディアムボブ、背が低くて胸がおっきくて、レースやふんわり系の服が大好きな瑠璃。
甘めのルックスは私と正反対だけど、妙に気が合う。大人になってできた親友って感じだ。


「なんで知ってるのよ?福谷からの情報?」


私は眉を寄せて問う。
瑠璃と販売一課の福谷は交際四年、結婚間近だ。

瑠璃はぽってりとした唇を横に引き笑う。


「健ちゃんに聞かなくても、本社中知ってるよ。一販課が勝手に大会議室使って、LED特販がキレて、総務がてんてこ舞いだったって」


はは~、もう有名な事案ですか。
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