鎖恋-僕たちクズですー
2 ワタシなんか・・・

逃げたお姉さん

「私ね。バイト始めたんだ。」真奈と僕は部屋に入りリビングで話すことになった。

「何の?」

「うーーん・・。あれ・・」僕はまったく見当もつかなかった。

「まぁ・・・夜の・・・」僕が察する限り・・お水系とかをイメージしてたが

「そんな感じの・・・」真奈はどことなしか、ちょっと酒臭い。僕は一瞬、冷めた目で真奈をみてしまった

「なんでだよ。なんでそんなことするんだよ。」

「だって・・・お金欲しかったし。東京にいたいし・・。」仕事で貯めた貯金もそこそこあったようだが

いずれは底をついてしまう。手っ取り早いか。夜の仕事は。学生である僕は真奈を責めることもできない。

「でも・・・わたし・・・怖くなって」

「・・・仕事場から逃げてきたのか?」

「うん・・・」

クリスマスの夜に真奈は一人で夜の街をかけずり回って、僕のアパートまで逃げ込んできた。

それを想像しただけで、なんだか僕は真奈が痛々しくてたまらない。

「そんなイヤな目にあったのか?」僕は真奈に何かあったのか心配だった。

「うん。ちょっとイヤなお客さんがいてね。」

溜息をつきながら真奈はハンドバックからタバコを取り出した。

「ゆうくん・・吸っていい?」真奈はいつからタバコなんか・・・僕の返事を待たずにタバコをふかし始めた。

「タバコ・・・吸うんだ・・・」

「うん。まあね。たまにだよー。ホントにイヤになった時だけ。」

タバコを吸わない僕にとって、真奈がすっごく大人に感じるというか・・

「吸う?」真奈は僕にも1本手渡した。

「ああ・・。」

会話も続かず・・・僕たちは各々・・・想いにふけってタバコをふかしていた。

真奈の横顔はなんだか遠いところを見据えているような・・・物悲しげな目線で

僕は僕で・・・真奈のためにいい台詞のひとつも言えないもどかしい感じが

タバコをふかすたびに真奈にも伝わるんじゃないかって・・・

それから

僕たちは、ただ寄り添って寝むってしまった。

お互いなんだか疲れていたのかもしれない。

真奈は僕の腕の中にいる。

なんとも愛おしい寝顔だった。
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