Pair key 〜繋がった2つの愛〜
1. 嫉妬編

吹き抜く鍵穴

*side 愛音*


「すいませーーん、ちょっと写真お願いできますかぁ?」

「ああ、構わないが」


(また……今日これで何度目よ……多過ぎじゃない?)

松元さんと久々に、休日デートという名の小旅行なもんだから……早朝から張り切って目一杯お洒落して来たのは遊園地。
の、隣にある観光名所……
わたしは女子大生っぽいグループの、写真を撮ってあげてる彼の後ろ姿を恨めしそうに眺めていた。

(なんで他人に撮影頼むかなぁ~?5人もいるんだから順番に回して撮ればいいじゃん…!)

自分だったらこういう時、必ず集合写真を記念に残したがる……
理不尽なことをしてる自覚はあったけど、そう思わずにはいられなかった。

(それにしたって、どうして松元さんなわけ?こんな、見るからに無愛想っぽい人よりも、その辺にいる人柄の良さそ~な夫婦とかに頼めばいいのに……)


フツフツと込み上げるものは明らかに嫉妬だった。
いい加減ウンザリしているくせに、自分から断ってくれない松元さんにもイライラしたけど……女子大生のキャピキャピした話し方よりはマシなわけで。
明らかに色目を使って気を引く素振りにムカムカした。見たくなかった——

(彼女が隣にいることぐらい、見れば分かるでしょうがッ)

カメラ7台5人分だろうが10人分だろうが、チャチャッと適当に済ませればいいのに、変に神経質な松元さんはアングルにこだわり、表情にこだわり……
ちゃっかり並び方の指図を出しながら、彼女達にとって忘れられない思い出になるだろう記念写真を撮ってあげていた。

(普通、わたしとの思い出が優先じゃない!?)

わたしはそれが気に食わない。
初めのうちの数回は「知らない女の子には意外と優しいよね……」とか思いながらちょっと感心してたけど、こうも次から次へと依頼が殺到すると、いい加減彼女たちの狙いが見えてきて……

日頃から彼に鈍感娘と罵られるわたしですら勘づけたことに、松元さんが気付かないハズがない。
なのに避けずに受け止める……それが無性に腹立たしくもり淋しくもあった。

(松元さんは、わたしとのデートを何だと思ってるのかな……)



わたしは今日という日を何日も前からずっとずっと心待ちにしていた。
着ていく服もカバンも髪型も、使っていく化粧品も持ち物も、小さなアクセサリーの一つ一つ、香水も靴も何もかも全部、上から下まで身に纏うものの、些細な違いにいちいち迷って比較して、悩みに悩んでチョイスしたお気に入りのコーディネート……
なのに一言も触れてくれなければ、ろくに見ようともしない松元さん。


そんなふうに……彼の関心すら誘えないでいるわたしは、本当に彼の恋人と呼べるのだろうか?

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