散華の麗人

民の為

城の廊下を通ると、向こうから侍女がやってきた。
「陛下。」
侍女が平伏す。
「どうした?」
「は。千代様がこちらに」
「え!?」
一正は、言葉を最後まで聞かずに声を上げた。
「本城にいるんやなかったんか!!?」
一正は目を見開いた。
「それが……」
侍女は後ろを見た。
その背後には、いつの間にか、女性の姿があった。
「わらわがいて、何か悪いことでもあるのですか?」
女性が一正を睨む。
「げ!?千代。」
一正は後ずさりする。
「“げ!?”とは、失敬な!」
千代と呼ばれた女性は“バシンッ”と一正を張り倒した。
「何です?側室を娶られましたか。そうですか。わらわは用済みですか!!」
風麗の方をちらと見た千代は癇癪を起こしたように怒鳴った。
「どうせ、側室だけでは飽き足らず、遊郭三昧なのでしょう!!」
「側室は持ってないぞ。あんたが好きやからな。」
怒鳴る千代に一正は笑いかける。
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