桜の木の下で-約束編ー

4.追憶の再会 - 和鬼 -




生番組の収録が終わり、
スタジオを後にしたボクは
闇から闇、
陰からに蔭を渡りつづける。

闇に紛れながら、、
街のネオンや人々の言葉を耳に留めていく。



そんな言葉を感じながら
ボク自身の心が
孤独になっていくのを感じる。


どれだけ人に憧れても、
どれほど人でありたいと願っても
ボクが変わるわけじゃない。



鬼と呼ばれるボクの存在が
この世界にとって
異質な存在であるのは紛れない事実。


否定することのできない真実。




YUKIとしての姿を解いた途端、
ボクを捕えられるものは
何処にもいない。



人の世界と隔離された場所でしか
ボクは生きることを許されない。



ボクの心を追い詰めていく。



孤独の影が闇濃く落ちる。





あの桜の木に腰かけ
街を見下ろすのは、
ボクがボクであり続けるため。


人の世に自身を留まらせるため。




人の世に光を見出したいから、
ボクはずっと見つめ続ける。



異質のボクを受け入れてくれる
人の世のぬくもりを。




だけど……それは……
幾月を越えても辿り着かない。




ボクは何を続けても望んでも、
ボクとして受け入れて貰うことは出来ない。




鬼のボクが、暗闇に
取り込まれるのを覚悟した最中、
突然現れた少女。




諦めにも似た気持ちで
人の世(まち)を見下ろしたとき、
あの少女がボクのテリトリーに入り込んできた。




あれ以来、思い浮かぶのは
咲のことばかり。






鬼のボクが
魅了された少女。




いやっ……そうなることを
望み続けたボクが……、
その願いを叶えるための
第一歩を踏み出すきっかけをくれた少女。


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