桜の木の下で-約束編ー

7.異変 - 咲 -


気になってたYUKIの正体が和鬼だった。


それがわかった私は、
ずっとかかっていた靄から解き放たれたように
頭の痺れも薄らいでいた。


『桜の木の下で』


そう声にならない声で囁いた私。


和鬼からの返事を受けて、
私は依子先輩の家でのお泊りを丁重に断った。


御神木の下で、
和鬼と待ち合わせをしたから。


「あら咲、遠慮なさらなくていいのよ。
 お父様にも伝えてあるわ。

 今日のYUKIの打ち上げに、
 咲もご招待したかったのに」


今更ながらに気が付いた、
依子先輩の……醜さ。


依子先輩は私がYUKIのファンだと知り、
YUKIと知り合いだと言う事を見せつけるように
行動してたんだ……。


部活の憧れだけではわからない
依子先輩の裏側がチラリと垣間見えた瞬間。


依子先輩の本性を少し知ることが出来た私は、
YUKIと親しく話したLIVE後の私に対して、
凍てつくように鋭い視線を向けた理由が分かった。



「依子先輩、今日は楽しいひと時を有難うございました。
 お先に失礼します」


丁重に先輩に挨拶をして、
LIVE会場を後にすると一角に着物姿や和服べースの装いに袖を通した
大勢のファンたちが集まっていた。




そんな会場に背を向けて、
私はMP3プレーヤーを再生する。




先ほどまでのLIVEの余韻に
少しでも長く浸っていたい。





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