薬品と恋心

絶望


ーすぐに会える。
その期待はもろく崩れ去った。


帰ってしばらくして、所用で出掛けていた両親の乗った馬車が盗賊に襲われ、ふたりとも行方不明となってしまったのだ。


屋敷に残されたのは多数の使用人と執事、そして伯爵家の血を引くティアただひとり。


まだ10歳の子供に屋敷を取り仕切ることなどできるはずもなく、ティアはしばらくの間、叔父に引き取られることになった。


叔父は貿易商を営んでいたため、ティアは王都を離れ、遠く離れた港町にある叔父の屋敷に連れていかれた。


その地はガラが悪く、今まで見たことのない粗暴な輩であふれていた。


いや、下町なのだからそれが普通だったのかもしれない。


しかし、今まで王都に住み、上品な上流階級の人たちとしか交流を持ったことのないティアにとってそれは衝撃的で、いくらそれが普通なのだと言われても信じることができないでいた。



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