音楽が聴こえる

side ジュン

◆◆◆
「……何だ…あいつ」

俺の呟きを謙二は鼻で笑い、ストラップを首から外してベースを机の上に置いた。

「下手くそだって、クク」と、山路は声を殺して笑いやがった。

「何だよジュン、お前咽痛いのかよ?」

斗夢を見ると苦笑いを浮かべて、ドラムセットを崩し始めている。

練習用のドラムやアンプは地味先が教頭に掛け合って、隣りの使用されていない準備室に置かせて貰っていた。

「……風邪気味なだけってーか…終わりにすんのかよ」

「センセーに終わりにしろって言われたじゃん」

山路までアンプを片付け始めている。

「だーっなんだよっ!!お前らまでっ」

俺は頭をガシガシ掻きむしり、机にドカリと腰を落とした。


「何でそんなに香田先生に絡むんだよ。折角引き受けてくれたのに」

謙二は俺がぶっ飛ばした地味先の本を屈んで拾う。

剥がれ落ちた表紙とカバーを見た途端、奴は声を出して笑った。
< 41 / 195 >

この作品をシェア

pagetop