sEcrEt lovEr

*恒輔 side

退院を明日に控えたその日、彼女から気持ちを打ち明けられた。

突然すぎて、まして恋愛を暫く休んでいた自分には何て返していいかが分からない…

目の前の織依ちゃんは顔を真っ赤にして、今にも泣き出しそうな表情をしている。

医者としても半人前で、何もしてあげれなかったのにな。

何で俺がいいの? どこがいい?

自惚れすぎな質問はできないけれど、勇気を絞って思いを伝えてくれた彼女にはせめて素直でありたい。

「君が思っているような恋愛はできないよ。…それでもいいの?」

言葉を選んだつもりなのに、これじゃあ全て彼女任せだ。

勉強だけじゃなくて、もっと女の子のことも学んでおけば良かったと思う俺に彼女は優しく微笑む。

「…うん。先生がいいの」

気がつくと、織依ちゃんを抱きしめていた。

いつの間にか、彼女の存在が俺の中で大きくなっていたんだな。

…と、急に身体が離される。

「そういえば、この前の女の人 彼女じゃなかったの?」

いつの、どの女の人だよ?!

「織依ちゃん、ちょっといいかな… っ!!」

最悪のタイミングで先輩医師が入ってくる。

…終わった

「桐柳~… あと数時間が何故待てん?」

まさか、このハプニングを自分がいなくなっても尚 語り継がれるなんてこの時は思いもしなかった、

…神谷先生によって。
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