むとうさん

1人の週末と黒塗りのベンツ

この一ヶ月ほど色々なことがありすぎた。

付き合って、この年齢だから結婚を少しは意識して付き合ってた人に家庭があってコールドゲームになったこと。

なんとなくずっと同じようなことをして、クリエイティブなことができなくて疑問符がでていた仕事でそんな自問自答してる間がないほどインプットが増えたこと。

それによって、大失恋したのに恋愛が一時棚上げになっていること。

仕事に救われてるなんておかしな話だけど。本当は逆だよね。心が通う相手だったら、仕事の悩みがプライベートによって救われるものだよね。

1人の週末の昼過ぎは清々しいほど晴れている。

ベランダに出て一服する。もう部屋着で出るには肌寒い季節になった。

ベランダに置いてある、まだ座れる椅子に腰掛けて大岡川を眺める。

正直きれいな川じゃないし、向こう岸にはラブホテルが見えるし。

ほんの一か月前は達也が隣に立っていた。馴れ合う関係でも彼は私をいつも椅子に座らせてくれた。他人から見たら当たり前なのかもしれない。でも、1年以上付き合ってもそう扱ってくれる男性って中々いないよ?

それとも、1年以上付き合ってもお客さんだったから気を遣ってくれてたのか。

気を遣うほどの距離感で男女の関係でいるのと、気を遣わないほど近い関係でいるのとどっちがいいものなのか。

私は達也にどっちも思って欲しかった。ドキドキも、まったりも、全てひっくるめて愛して欲しかった。

というより、今、何も変わらない愛がほしい。

いつまでも夏のままのビーサンをつっかけてしゃがみこんで一人で涙を流した。
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