むとうさん

酔っちゃった

「うそぉ…」

定休日は毎週水曜日。
今日は土曜出勤して、1日図面とにらめっこして、中谷さんからようやくOK貰えて帰ってきたのに。

傘持ってきてないのに雨が降り出すし、買った雑誌は電車に忘れるし今日はなんだかついてないなぁ。

飲む気満々で1番にここへ来たのに臨時休業とは。柏木さん、何かあったのかな。

大人しく家で飲むかな。登った階段を折り返してビニール傘を広げてとぼとぼと来た道を戻る。

後ろから車がきそうなので端によるとクラクションを鳴らされた。え?私?端にまでよったのに。

眩しさも相まって怪訝な顔で後ろを振り向くとこちらへ向かってきた車の運転席にいるのがよく知った顔だと言うのが分かった。

「何してんの。柏木さんとこでのむんじゃねぇのかよ。」

黒のランクルから少し顔を出した髭面の男が口を開いた。

「今日お休みだったんです!だから帰ります…」

雨音で途切れてしまわないように少し声を張り上げた。

「飯は食ったの?」

「まだです。仕事から直ったんで。」

「どっかいくか?」

やった。雨は冷たいし、疲れたしあったかいところで何か食べたい。

よいしょっとランクルの助手席に乗り込んだ。

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