むとうさん

いつも二人で

師走の夜は寒い。だけど、地下にあるspaceは今日も暖かく、美味しいお酒が飲める。

私が初めてここを訪れた時のように、また3人で談笑する。

「お前もう休みなんだろ。いいもんだな。大企業は。」
「武藤さんこそ、自営業なんだからいつだってお休みにできるじゃないですか。」
「あのなぁ。お前、そういう話じゃないだろ。」
それを見ていて柏木さんはくすくす笑う。

伊織と呼ぶのは今更恥ずかしい。武藤さんがまだまだ私にはしっくりくる。

「柏木さんはいつ店じまいにするんですか?」

「僕は年末年始福富町出るから、今年は30日から店じまいにしちゃうんです。」

「へー!旅行ですか?」

「旅行といいますか、ちょっと用事があってね。」

なんだ。営業しないなら3人で年越すのもいいなって思ったのに。ここにいないのでは仕方がない。

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