絶対王子は、ご機嫌ななめ

  神様のいじわる


人間やれば出来る。集中力って恐ろしい。

いつもだったら『そんな仕事に何時間掛るの?』と言われてもおかしくないくらい時間を費やす名簿作成もあっという間にこなし、予定通り十九時までに仕事を終えた。

深夜営業の男性従業員との引き継ぎも終わり、ロッカールームへと急ぐ。

この後とくに予定があるわけじゃないから急ぐこともないのだけれど、仕事を終えてしまうと緊張の糸が途切れ、本当の自分が出てきてしまうのも時間の問題だった。

普段ならこの時間のロッカールームは、仕事を終えた従業員やバイトさんたちがちらほら見えるけれど。ありがたいことに今日は誰もいなくて、ホッと息をつくとベンチに腰掛けた。

途端、脳裏に政宗さんの顔が浮かぶ。

今日の初心者レッスンは智之さんと他のレッスンプロの当番で、政宗さんは控え。それでもアチコチ動き回っている政宗さんとはいつもなら何度も顔を合わすのに、あの後やっぱり円歌ちゃんとどこかに行ったのか、一度も顔を見ることはなかった。




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