アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]

もう君に好きって言えない




だって好きになっちゃったんだもん。


「吉川先輩、好きですっ」

「んー」

「そういう素っ気なさもけだるさも超カッコイイです!」

「んー」

「先輩、こっち見て下さいっ」

「無理」



今本に集中してるから、とあなたは呟いた。

放課後の図書館、左端の1番後ろの席、私とあなたの定位置。

窓ガラス越しに聞こえる運動部の掛け声、

睫毛を揺らすページをめくる音、

飲みかけのラテの伸びた影、

それに添えているあなたの綺麗な指、

少し大きめのセーター、

長めの前髪、口角の丸い影、一重の瞳、白い肌。

あなたの全てに、胸が張り裂けそうです。

「いつもいつもよく飽きないね」

「はい、好きですっ」

「人の話聞いてる?」

「はい、好きですっ」

「はい、無理です」

「なんでですかっ」

先輩に片思いして一年が過ぎた。

吉川先輩と出会ったのは友人の紹介がきっかけ、気付いたらもう後戻りできないくらい好きになってた。

「先輩、先輩はどうして私に恋してくれないんですか」

「好きな人いるから」

「どうせこの前読んでた小説のヒロインでしょ」

「違うよ」

「またまたー」

「違うよ」

あれ、なんか。

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