おててがくりーむぱん2

5



歩道の上に尻餅をついた佑司が、ぽかんとした顔で光恵の背後を見ている。


「だっ、大丈夫?」
光恵はあわてて佑司に駆け寄った。


佑司はまだぽかんとしている。


「ちょっと!」
光恵は振り返り、そこに立っていた男をにらんだ。


「ミツにさわんな」
孝志が言った。


光恵は「え!?」と声を上げる。


孝志は光恵の腕を引っ張って、ぎゅうっと抱きしめた。


「ミツは俺のものです。触らないでください」


走って来たのか、孝志のいつもの帽子はすっとんで、髪はぐちゃぐちゃ。
眼鏡もどこか歪んでいる。


「ちょっと、なんでここにいるの?」
光恵はあわてて、孝志の腕の中でばたばたと騒いだ。


「偶然」
孝志の頬が、ぷううっと膨らんでいる。


「そんなわけないでしょ。つけて来たの?」
「だって……ミツ、冷たいんだもん」
「は?」
「冷たいよ、俺今日クランクアップだったのに!」
「知らないよ、そんなの!」
「それより、誰だよ、これ。俺がいながら、こんなこそこそと」
「こそこそって」
「男と会うって、言わなかったじゃないかっ」
「だって」


言ったら、会うなって言うでしょ?



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