そっと、もっと、ぎゅっと~私に限り無い愛を~

●つかず離れず・・・

「こことこことここ、間違い、やり直し」

「・・・はい」

しょんぼりしながらデスクに戻る。


「大谷先輩、矢沢さんにやたらと厳しくしすぎですよ」

そう言って助け舟を出すのは、航希。

「バカ言え、大事な書類に不備があったら、何もならないだろ」


…確かに。

「でも、まだまだ覚えることだらけなんですから、

もう少し優しく教えてあげてもいいじゃないですか?」


「・・・」

航希の言葉に、修は何を言うでもなく、ただ不機嫌に視線を逸らすと、

自分の仕事に取り掛かった。


「あんまり気にしちゃダメだよ?大谷先輩は、いつもああだから」

そう言って私を元気付けてくれる航希。


「ありがとうございます、でも、へましたのは私ですから、

言われても仕方ないですよ」

そう言って苦笑いした私。


「矢沢さんは真面目だな・・・もっと気楽にやろうよ」

そう言って私の肩を叩いた航希は、自分の仕事に戻っていった。


・・・修は、私を一人前にしようとしてくれてるだけなんだから、

仕方がない。・・・でも、やっぱりへこむ、よね。
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