初恋 二度目の恋…最後の恋

楽しい時間

 一か月前の私が今の私を見ると、驚きを通り過ぎて腰を抜かすのではないかとさえ思う。研究所に籠り、ひたすら研究に打ち込んでいた私が今は二人の男の人と一緒にドライブを楽しんでいる。それも一緒にいるのが私で申し訳ないと思うほどの容姿を持った二人だ。


 車に乗り込んですぐに折戸さんはどこに行こうかと聞いてきたのだけど、どこというのが何もない私が黙っていると、助手席に座っている小林さんが振り返り、ニッコリと笑って話しかけてきた。


「折戸さんは何も考えてなかったのですか?」


「一応考えていたけど、三人で行くのはどうかと思って思案中」


「どこに行くつもりだったんですか?」


「ドライブで色々なところに行くか、水族館のどちらかにしようかと思ってた。でも、水族館に行ったら、どうせ、蒼空のことだから、魚を見る度に『美味そう』とか言いそうだし、やめた」


 水族館はゆらゆらと揺れる水槽が綺麗で私は大好きだった。その中を泳ぐ魚の群れをみると癒しにもなる。でも、そんな水族館も…三人で行くのを想像すると…折戸さんの言うことが正しい気がする。


「大当たり。俺、水族館に行くと無性に焼き魚が食べたくなる」


 そんな小林さんの言葉に折戸さんも私も笑っていた。


 折戸さんの車は南に向かって走っている。どこに行くとも決まってないドライブはとても楽しいものだった。


 車の中にはずっと笑い声が絶えない。


 折戸さんも小林さんもとても楽しそうで、最初は緊張していた私も徐々に緊張が解けていた。

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