僕と三課と冷徹な天使

初仕事~外線電話

パソコンのセットアップを続けながら、
僕はコオさんから目が離せなかった。

といっても、
ジロジロ見るわけにはいかないので、
こっそりと見ていた。

年齢=彼女いない暦、の僕にとっては
何てことのない技だ。

そんな風に見ているうちに、
時折見せる笑顔が
とてもかわいいことに気づいてしまった。

我ながら、チャレンジャーだと思う。

あの冷徹なコオさん相手にかわいいなんて。

それに仕事中だぞ。

・・・いや、でもかわいい。

綺麗な目が細くなって優しくなる。

でもくしゃくしゃしてなくて・・・

何だか癒されるような・・・

うん、まあ、とにかくかわいい。

そんなことを考えながら、
うっとりしていると
電話が鳴った。

僕はハッとして、
反射的に受話器を取った。

何だか今までと違う気がする。

そうだ、呼び出し音が違ったんだ。

これは外線電話だ、と気づいたときには、
電話の向こうから「もしもし」という声が
聞こえてきていた。

「は、はい、丸山商事です」

僕は何とか社名を言うことができた。

「海山商事の飯田と申します。
 宮崎部長いらっしゃいますか?」

僕は緊張していたが、
何度か内線電話で慣らしたおかげで、
社名と名前をメモることが出来た。

でも宮崎部長あて?と思いつつ、

「・・・はい、少々お待ちください」

と保留音をかけた。

すかさずコオさんが

「誰から電話?」

と聞いてくれたので

「海山商事さんから
 宮崎部長あてなんですけど・・・」

と答えると、コオさんは

「じゃ、宮崎部長にまわすね」

と言って、部長に内線をかけて
電話をまわしてくれた。

すると、横からじゅんさんが

「灰田君、外線電話を取るなんて勇気あるなあ。
 僕らは外線電話が鳴ったら
 コオさんにお願いしちゃうよ」

と言った。

そうなんだ、じゃ、外線は
僕が取らなくてもよかったのかな?
と思っていると、
コオさんが受話器を置きながら

「出てくれるとすっごい助かるんですけど。
 灰田君、次からもよろしくね。
 外線は私もフォローするから」

と言って、優しく微笑んだ。

はじめて僕に笑ってくれたことに感動して、

「はい!」

と張り切った元気な返事をしてしまい、
僕は恥ずかしくなった。

それを聞いて
コオさんはまた笑ったような気がしたが、
パソコンのほうを向いてしまったので、
よく見えなかった。
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