倦怠期です!

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でもゴールデンウィーク前だったから、あれは3ヶ月くらい前の話になるのか。
松坂さんと夫の浮気疑惑が晴れて以来、生理中を除いて、週に2日かそれ以上、夜の営みをするようになった。

その一因となった、松坂さんの「出演」を見てみようという好奇心がムクッと湧いた私は、夫がかつて「利用」していたエロサイトの「メロメロメロウ」を、マイパソコンでこっそり見たことがある。

「熟女もイ・ク・の」ってタイトルからして、そのまんまっていうか・・・松坂さんの女優名(それとも源氏名?)である「いくみ」に絡めてつけたのかしら。
なかなか上手いネーミングじゃない、なーんて思いながら即退却した私は、結局内容まで見る勇気がなかった。

松坂さんがどういう事情でそこに至ったのかは知らないけど、夫のように偶然が重なって、だんなさんが「メロメロメロウ」を見て、万が一「いくみ」さんを発見したら。
もしかすると、息子の潤くんだって、発見する可能性だってあるんだし。

とにかく、自分の友人・知人はもとより、身内に発見されたら、お互いそれからどうつき合っていけばいいんだろうと思わずにはいられない。

そういう意味では、私にはその類の度胸がなくてよかったと思う。
自分の裸はもちろん、濡れ場なんて誰にも見せたくないし、見せるような「芸術品」でもないし!

・・・でも、頻繁に夫とエッチをするようになってから、少なくとも夫だけには裸を見られてもいいと思うようになった。
いまだに「エッチ大好き!」とまではいかないけど、夫のたくましい筋肉質の硬い体に触れたい、悩ましい表情を見たい、切ない声を聞きたいという欲は、するたびに膨れ上がっていると思う。

それに、普段は私のことを、「なぁ」とか「おまえ」と呼ぶ夫は、エッチをしている時だけは、いつも「香世子」と呼んでくれて。
夫に名前を呼ばれると、いまだに自分が世界ですごく・・・特別というか、別格というか。

愛されてると思うし、夫への愛情が、ますます募っていくのよね。

「俺さー、実は最初、タハラの大阪勤務になるはずだったんだ」
「あら、そうだったの」
「でも大阪は事務員しか募集してないと分かり。で、営業希望だった俺は、じゃあ福岡か横浜、どちらか選べと言われ、結局横浜にした」
「福岡は永田さんだったよね。確か入社1ヶ月で辞めた」

東京本社であった新人研修のときから、永田さんは大丈夫だろうかと、みんなで心配していたよねぇ。
案の定、同期の中で一番最初に辞めたという点では、20年以上経った今でも、いまだに印象に残っている。
顔はもう覚えてないけど。

「両親が住んでるから、福岡でもよかったんだが・・・横浜選んでよかった」
「横浜は初めてだったから?仁さんって、どこに住んでもすぐなじみそうだもんね」
「まあな。だがその経験があったから、俺はなるべく転勤がない会社を選んだんだ」
「あ・・・そう。実は転校や引っ越しが嫌だったの?」
「なんかなー。子どものときはあんま考えんかったけど、父さんが数年おきに県外の転勤があると分かってるから家も買えんし、慣れた頃にまた転校だ、引っ越しだ、っていうのもな。それで俺は一人っ子やったし」
「そっか」
「ま、いろんなところに友だちができるって利点もあるが。たぶんおまえの性格だと、転勤はない方が、あっても少ない方がいいと思う・・・」
「私の性格って、なに」
「環境になじむまで時間がかかるタイプ」
「あ・・・そう、ね」

何気に夫は私のことを知ってるじゃん。

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