full of love~わが君の声、君の影~

8.キミニフレタイ


――夏 またライブの季節がやってくる

いつもと違う
おととしのとも違う
少し緊張している自分がいる。

ステージに出て真っ先に彼女を見つけた。
もうニット帽をかぶってなくてもすぐにわかる。



“君のために歌う”
なんて若いころは平気で好きな子に言っていた(痛てーな俺;)

実際あとで神や坂上からキツメの突っ込みが入るほど
その子の前ばかりに行っては派手なギタープレイをしてカッコつけていた。

もともとモテたくて始めたギターだし;


だからといって
誰かを想って誰かのために歌うなんてことしたことなかった。

“歌詞に自分の想いをのせて歌う・・”
ようにはしていたつもりだが
今までいかにそれが薄っぺらいものだったのか知った。


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