我妻はかごの中の鳥

撃退法をちょっとだけ


◇◇◇



俺の妻は、その美しさゆえから世間から羨望される。


外の世界からは異常に見える存在なため、仕方がないといえば仕方がないのだが。



「……ぅわ」



思わず顔をしかめる。


待ち合わせに6分遅刻した。


それだけで、砂糖に群がる蟻のように寄ってくる人、人、人。



人だかりができていて、ああもう瑠璃が見えない。




――今日は、瑠璃と食事に行く予定だった。


前にたまたま行ったレストランが10周年らしく、お食事招待券が届いた。

それを使おうということになり、会社帰りに待ち合わせて行くことになった。

レストランの最寄り駅はちょっとした繁華街。

電車一本乗り過ごすと、そのぶん瑠璃が人の目につく。


で、目の前の人だかりだ。


ナンパという下劣な真似をする輩はいないものの、皆“吸い寄せられる”

知らずのうちか、どこぞの芸能人かと勘違いしてるのかは知らないが。


どうやら瑠璃は、そういう魅力があるようだ。
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