マネー・ドール -人生の午後-

(3)

 きっと、慶太を傷つけてきたのは、私。

 あなたは、私のことなんて、本当は好きじゃないって思ってた。
 こんな田舎臭い、地味な女、遊びだって、思ってた。キラキラした、都会のあなたは、私なんて、本気じゃないって。
 本当に好きになってしまったら、つらくなるって、気持ちを、どこかにしまいこんでた。
 そして……あなたのお金を手に入れるために、カラダを渡してた。
自分のカラダで、それが手に入るって、私はわかってたから……だって、私は、あの女の娘だもん。
あの女も、私とよく似た顔で、私とよく似たカラダで、オトコを操ってた。
私も同じね。

 私も同じ……最低な女……なのに、あなたは、こんな私のこと……愛してくれるのね。

「私ね……求められたいの」
 居場所が欲しいの。お前が欲しいって、強く言ってほしいの。邪魔者扱いされるのは、もう……嫌なの。
「欲しい。真純、お前の全部が、欲しいんだ。お前の全部、俺に、くれよ」

「私……本当はね……本当の私はね……」
 やっぱり、言えない。こんな私……私の過去……私の真実……慶太にだけは、絶対に知られたくない……
 慶太……私……もう、過去を捨てたいの……何もかも、忘れたいの……

「忘れたいの……何もかも……もう、忘れたいの……」
 俯く私の涙を、慶太はそっと拭って、ギュッと抱きしめた。

「俺が、忘れさせてやるよ」

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