片道切符。

花火が、上がる



「よっし、今日はここまでにしよう!」

現場監督の三木さんの一声で、あたりから喜びの声があがる。

仕事を上がれるのは、誰だってうれしいはずだ。


だけど今日は、とりわけ特別な日だったりする。

そのために、今日はいつもより少し早めの仕事上がりだ。


「いつもの場所に集合だって、社長から。」

「はい、わかりました!」

汗で濡れたシャツを着替えながら、伝言を伝えてくれた先輩に礼を言う。


「今年はいいねぇ、若いお姉ちゃんに酒ついでもらえるし」

「ですねぇ~。より一層楽しい祭りになりそうですな」


オヤジたちの会話を後ろで聞きながら、なぜか俺は不機嫌になった。

…なにが楽しい祭りだ。ばっくれてやろうか。


8月の第2月曜日、この日に毎年行われる地元の花火大会。

俺の会社では、仕事終わりにみんなで花火の見える居酒屋で宴会を開くのが恒例だ。


付き合いもあるし、この日は社長がみんな奢ってくれるし、

酒も入って先輩方と深い話もできる場だったりして、

参加することはちょっとした楽しみだったりしたんだけど、

今年は全く気が進まない。

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