妖刀奇譚









外へ出ると、息が白くなるほど空気が冷えていた。


頬や鼻の頭がちりりとする。


一段と冬本番に近づいたようだ。


思葉はマフラーを巻き直して両腕をさすった。



「寒っ……うー、こんなに晴れてるのに……」



雲ひとつない空を見上げて、思葉は身を縮めながら表通りを歩いた。


すれ違うサラリーマンらしき人たちは皆、コートの襟を立てて寒そうに背中を丸めて駅を目指している。


追い越して行った2人の女子高生は、自転車なのにスカートがとても短かった。


寒くないのだろうか、見ているこっちが鳥肌がたつ。



「おはよう、思葉」



後ろから誰かが走ってくる音が聞こえて、声をかけられると同時に背中を叩かれた。


遠慮ない力に思葉は前のめりになって倒れそうになる。



「お、おはよう、來世……」


「あれ?」


「なによ」


「いや、やり返してこないのかなーっと」



戦闘態勢になっている來世に「ばか」と言って、思葉はマフラーを鼻のあたりまで引っ張った。




< 232 / 376 >

この作品をシェア

pagetop