年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~

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◇ 

お盆休みを利用して実家に帰省して、花火大会に着ていくから浴衣を出して欲しい、と正直に頼んだら、お母さんはものっすごーくなにか言いたそうな顔をしながらも、嫁入り道具だという桐の箪笥を漁ってくれた。どう考えても宝の持ち腐れだとしか思えない着物たちの中から、何枚か畳紙を取り出す。

「なによ」
「別に?」

含みのある視線に刺のある声を向けると、包みを開いて中身を取り出しながら、とぼけた返事を返してくる。

「別になにも言わないわよ。中学の時も高校の時も、友達みんな浴衣姿なのに面倒くさいからって理由で一人だけ普段着でお祭りに行ってたあんたが、三十になっていきなり花火大会で浴衣が着たい、なんて言い出しても、喜びこそすれ文句なんて言わないわ」

「うっさいな」
 
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