あなたと恋の始め方①

彼氏いない歴

 彼氏いない歴=実年齢の私に初めて彼氏と呼べる人が出来た。自分で言うのも可笑しいけど、私は恋愛から一番遠い場所にいるのではないかとさえ思っていた。そして、私の初めての彼氏になってくれた小林さんは私が初めて恋心を抱いた人。


 初恋の人。それもテレビの中にいた人に恋のような憧れを抱いた私が実際にその人に出会うだけでも凄い確率なのに、一緒に仕事をして、また片思いをして…晴れて付き合うようになった。これは確率的にはあり得ないことで…。運がいいと言うだけでは済まされない気がする。その現実が夢のようで私を抱きしめたまま小林さんは優しく色々話しかけてくれたけど、私の頭のネジは緩んでいる。言葉は聞こえているけど、オーバーヒート気味に私の脳は誤作動を起こしているのか理解が出来ない。


「美羽ちゃん。大丈夫?俺の声聞こえている?」


 小林さんは腕の力を緩めると私の顔を覗き込んでくる。真っ直ぐな瞳で見つめられるとドキドキが止まらなくなって、また一層、わけがわからなくなる。


「すみません。あの、ちょっと動悸が」


 そんな私を小林さんはクスクス笑いながら見つめていた。そして、ゆっくりと私の手に自分の手を重ねる。ふわっと握られた手は、ゆっくりと小林さんの胸に導かれた。すると、私と同じくらいか、私よりも激しく胸の鼓動が凄い。余裕かと思っていたのにそうではないようだった。


「凄いでしょ。美羽ちゃんのと変わんないくらい?」






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