似非恋愛 +えせらぶ+
フェーズ8

模索


「やだああああっ」
「こら、拓弥、もうばいばいだよ」

 斗真にしがみついて離れない拓弥に、由宇が困り果てている。

 明日も仕事ということで、昼前に実家をあとにすることにした私達。それを、ききつけた拓弥が、斗真にしがみついて泣き叫んでいる。

 斗真も困ったように、拓弥を抱き上げた。

「今生の別れでもなし、泣くんじゃねぇよ」
「うわああああああああっ」

 今生の別れ、なんて、子供に言っても伝わるわけないのに。斗真は真面目な顔で拓弥に話しかけている。

「拓弥、また会えるから、今日はばいばいしよ」

 私も話しかけるけど、拓弥は首を横に振る。

「そうだよ、拓弥。ちゃんとばいばいしないと、斗真に嫌われちゃうよ」
「そうだぞー、お母さんの言うことを聞かない子は嫌いになっちゃうぞ」
「!」

 斗真の言葉にはっとして、拓弥が顔をあげた。その目には涙が溜まっていて、可哀そうになってしまった。

「また、あそぶ?」

 拓弥が不安そうに斗真を見た。
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