*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~

・ポッキーと恋バナ

気づけば、中庭のあの桜の木もすっかり葉を落とし、どんよりとした低い空からは、いつ雪が舞い降りてきてもおかしくないような……そんな季節が訪れていた。


放課後の教室。

いつもの4人組でお菓子を食べながら、他愛のない話をしていた。


「なぁ、なぁ……。言わへんの?」


アカネちゃんがニヤニヤ笑いながら、隣にすわるマリちゃんをつついた。

とたんにマリちゃんの頬は、夕暮れ時の日差しを浴びているのが理由じゃないぐらい、赤く染まっていく。

その様子だけで、なんとなく想像できる。


「ひょっとして……そうなん? 彼氏できた……とか?」


目をまん丸にしたエミコが尋ねる。


「うん……まぁ」


ポッキーを口にくわえたまま、恥ずかしそうにコクンと小さく頷くマリちゃん。


「ええええええええ! マジでー? 誰、誰?」


「えーと……。6組の……上田君」


「きゃ――――!」


わたし達3人は、廊下にまで聞こえそうなぐらいの大声で騒ぎたてる。


「なんで? 上田君から言われたん?」

「いつから? なあ、いつからなーん?」


質問攻めにあったマリちゃんは、一つずつ丁寧に答えてくれた。

その表情は、いつも以上に彼女を可愛くみせて、はにかんだ口元や、ちょっと潤んだ瞳がキラキラと輝いて見えた。


マリちゃん……幸せそう。

恋する女の子って、こういう顔してんだ……。

なんてぼんやり考えていると、ふいに声をかけられた。


「で。ちぃちゃんは?」

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