海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜

止められない想い

友情よりも恋を選んだ私は、

その後も簿記だ、ワープロだ、と理由を付けては相葉先生のところに通っていた。


どんな些細な事でも分からない時は聞きに行き、

どんな内容でもいいから、少しでも多く話しがしたくて必死だった。


とにかく、数少ないチャンスを逃したくなかったんだ。


その最中、私にはもう一つ受ける検定試験があった。

それは英検。


『大学に行くなら、英文科に行きたい。』


そう思っていた位、英語は得意だったし好きだったから受験する事を決めていた。


英検の検定日は日曜日で、もちろん学校は休み。


なので、試験を受ける為だけに登校する予定だった。


そして英検は大学の英文科を希望している梢も受ける事になっていた。



休日の午前中、検定を受ける為に学校に行くと、


「さく、おはよう。」


教室に着くなり、先に来ていた梢が笑顔で手を振った。


ニッコリと開いた口元から、白い八重歯が覗いているのが見えた。


「おはよう!」


私は受験票に書かれている番号を確認しながら梢の傍の席に座った。


「勉強した?」

「とりあえず少しだけ…。梢は?」

「私も問題集を少しかな。」


そう言って、梢は小さくあくびをした。


きっと本当は遅くまで頑張っていたのだろう。


英文科の大学を希望している梢にとっては、私よりも大切に思う検定試験だったに違いなかった。


この時、私と梢が受験する試験は3級だった。


授業の中では検定試験に向けた英語の授業がない為、個人個人が市販の問題集を使って勉強するしかなく、

その為、合格するには、より個人の努力が必要とされる状況だった。


その後も教室にはどんどん人が入り、一クラスがいっぱいになった頃、英語の先生が入ってきた。


3級の英検は筆記試験と実技試験があった。

今日の試験が筆記試験で、実技試験は筆記合格者だけが別の試験会場で受ける事になっていた。


「では、問題をお配りします。」


先生から問題が配られ、ほぼ定刻通りに私達は試験を開始した。
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