我妻教育

2.後継者の優越

早朝。


私の一日は規則正しく、自宅の弓道場で弓を引き、精神統一することから始まる。

そして、庭に出て鳥のさえずりに耳を傾けながら、池に架けられた橋の上から鯉に餌をやる。


心静かに過ごせる、一番好きな時間だ。



我が家は、広大な敷地の上に純和風の木造建築が建ち、庭には湧水地から清流を引き入れた池・芝生の築山・庭石などからなる回遊式庭園がある。


街中であるにもかかわらず、緑豊かで四季折々の景観は美しく、中でも樹齢150年を越える立派な松の木は我が家のシンボルである。


バシャバシャと水音を立てながら餌に群がる鯉を見つめながら、私は思いを巡らせていた。



我が『松園寺家』は、日本有数の資産家として名高い家柄である。


『松葉グループ』という名で、多岐にわたる事業を展開しており、
祖父【松園寺庄三郎】の入院も一部マスコミに取り上げられるほど世に知れ渡っている。



「松園寺家の人間としての自覚を常に持って行動するように」

幼少期から祖父や父に厳しく言い聞かされていたことだ。

何度も、何度も…。



よって、私はいつも心がけている。

我が家にふさわしい高潔な理性と人格を持ち、高い志を持つこと、を。

何事にも動じぬ強い肉体と精神を手に入れること、を。


文武あらゆる英才教育を受け、ことごとく一番をとった。

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