いちえ

枯涙




見上げると、ギラギラと輝く太陽が恨めしく思える。


五月蝿い程の蝉達の大合唱が、耳に残るようだ。




梅雨は明け、長い夏休みはもう目の前だ。



「……あちい…あちい…あぁ〜っ!!あちい〜……」


「お前が一番暑苦しい」



昼下がりの午後、美春と俊ちゃんと慶兄を除くいつものメンバーで、私と瑠衣斗の大学で何故か大集合していた。



キャンパス内にある中庭を抜け、青々とした芝生や木々を横に抜け、宗太の家に向かう所だった。



「しょーがねえだろぉ〜。あちいモンはあちいんだ!!」


「だからお前が一番暑苦しいんだよ」



龍雅と宗太の暑苦しい言い合いを余所に、私は別の事で頭がいっぱいだった。



「おい、もも。奴が来る」


「…は?」



瑠衣斗の言葉に顔を上げると、物凄い勢いで突進してくる人物が目に入った。



「…あぁ〜…」


「ももーっ!!るぅーちゃ〜ん!!」


「…俺もかよ」





騒がしい声とその人物に、周りの温度が高くなった気がした。



「出たな!!おんなおとこ!!」


「龍ちゃんそれ妖怪みたいじゃないか!!僕は嫌だ!!」



ジュリの登場により、更に暑苦しくなってしまったようで、息がし辛い。



てか……ジュリってこんなキャラだったっけ?


何だか龍雅にもかぶるような、ちょっと違う気もするが、あえて気にしないでおこう。
< 103 / 525 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop