海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜

あなたへと続く道

訓練の修了式を終えた数日後、

再び私は訓練を受けていた施設を訪れていた―…


「今日からお世話になります、河原さくです。今までもお世話になりましたが、これからもどうぞ宜しくお願いします。」


スーツを着て、少しだけ緊張気味な表情を浮かべていた私は、


パチパチパチ…


周りから起こった温かい拍手と笑顔に向かって何度も会釈をすると、用意されていた自分の席に座った。



「今まで訓練生だった河原さんはこれから講師になります。皆さんで協力し合いながら頑張っていきましょう。」


椎名先生の言葉に、他の講師達が「はい。」と頷き、私に笑顔を見せた。




訓練修了後、私は無事に通っていた訓練施設であるパソコンスクールに就職した。


今まで何度も授業で顔を合わせてきた先生方とは同僚になるし、


教わる立場だった私は、今日から教える立場になったのだ。


全てが今までの3ヶ月とは違うという事を、初日から感じていた。




「今日は初日だし、授業の見学にしましょう。」


椎名先生の言葉に「はい。」と答えた私は、授業が行われている教室に向かった。



授業はマンツーマンの個人授業と職業訓練などの団体講習。

どちらも行う事になる。



私は授業の邪魔にならないような場所に移動し、他の講師が行う授業を見させてもらった。




説明ではどんな言い回しをするのか。


生徒さんはどんなところで躓くのか。


私の知らない知識がないか―…




聞きながらいくつもメモを取った。


『自分が受けていた訓練の時に、ある程度細かくメモを取っていて正解だった。』


心の底からそう感じていたけれど、それでもまだまだ知識不足である事は確かだった。


“教える”という言葉は簡単に言えるけれど、実際、相手に伝わるように説明をするという事は非常に難しい。


例えば、一番初歩的な“クリック”を教える場合でも、


『どんな言い方をすると生徒さんに伝わりやすいだろう。』


改めて考えてみると、とても難しく大変な仕事なのだと感じた。
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