秘密~「ひみつ」のこと

和徳 カズ

確かあれは、俺が小学校6年の時。

父さんが出張で家を空けた夜、
母さんがひどく酔っ払った。

そんなに酔った母さんを見たのは、
後にも先にも、
その日だけ。

ろれつが回らないくらい酔っ払って、
目も虚ろになった母さんが心配で、
なんとなく側にまとわり付いていた。

「あんたは父さんの子じゃないんだよ…」

聞こえるか聞こえないか、
呟きのような、
耳を疑った母さんの言葉。

僕に向けられた言葉なのか、
独り言だったのか、

母さんは、
そう呟いた後、
ずっと泣いていた。

その言葉を聞いたのは、
後にも先にも、
その日だけ。

夢だったのかな、
時々そう思う。

でも、
夢じゃなかった。

夢じゃなかったんだって…







< 22 / 235 >

この作品をシェア

pagetop