戦国遊戯

台風一過

暫くの間は、本当に、驚くくらいなにもなく、平和に時間が過ぎていった。田畑の収穫を終え、冬に備えて薪などの燃料を蓄えた。

そして。

現代っ子には試練の時がやってきていた。


「はぁっくちぃー!!…あぁー…」

おっさんのようなくしゃみをしながら、布団にくるまり、ブルブルと震える玲子。

「…ちょっと玲子。いい加減、布団から出てくれない?片付けらんないでしょ」

呆れ口調で、さくらが言う。玲子は不思議そうに聞き返す。

「つかさー、なんでそんな薄着で平気なの!?布団手放したら確実に凍え死ぬ!」

世にも恐ろしいものをみるかのような表情をしてみせる。が、さくらは無表情で、玲子の布団をひっぺがした。

「いぃやぁー!さくら様ぁ!!」

泣いてすがる玲子を冷ややかに見下ろすさくらは、知らん顔で布団を持ち去った。



「ねぇ、酷いと思わない!?」

ブルブルと震えながら、森の中はやぶさと進みながら、はやぶさに問いかける。

週に何度か、森を訪れては、希美と連絡がとれないかと試しているのだ。

最初のうちは、あの襲撃事件のこともあって、誰か必ず付き添いがあったが、今はその心配もなさそうだろう、と言うことで、はやぶさと2人っきり(正確には1人と1頭だが)でくるようになっていた。

場所に着いて、携帯を開いてみるが、案の定、圏外のままだ。

「あぁーもぉ!!今日もだめだぁ」

はぁ、と、がっくりうなだれて、その場にへたりこむ。はやぶさが、まるで慰めるかのように、顔をすりよせてきた。玲子は笑いかけながら、撫でてやる。

「ありがとう、はやぶさ。いつも一緒に来てくれてありがとうね?ま、今日もだめだったけど」

苦笑いを浮かべる。

「少し休憩してこっか」

はやぶさが、その場にしゃがむようにして座る。玲子は、それにもたれかかるようにして座った。
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