戦国遊戯

かけがえのないもの

玲子はその光景に、思わず背筋が凍った。


「死んじゃった…」


元の世界にいるときには、同じクラスだというくらいの認識しかなかった。特にこれといって絡みがあったわけでもない相手だ、興味だってなかった。
わかっていたのは、常に人とかかわることを避け、成績が学年で1番だってことくらいだった。

こっちの世界に来たとき、再会したときは、同じ境遇の人間がいることを知って、少し嬉しかった。
けど、なぜかそう思ったのに、田中君が怖く感じられた。


そして。

さくらにひどいことをした。幸村にひどいことをした。
許せなかった。そして、信じられなかった。

自分が捕まって、それでもどこかで信じたいと思っていた気持ちを全て否定され、打ち砕かれ。



心底憎んだ。
許せなかった。



でも、少しだけ、かわいそうだと思った。
同情かもしれないけど、でも。
自分もどこかで、選ぶ道を間違えていたら。

学のようになったかも知れない。
そう思うと、少しだけ、学を責める気持ちが薄れていった。


そして、消えた学はきっと、今頃。

元の世界に戻っているんだ。


なんとなく、直感でそう思った。
そしてそれは。


学の死を意味していた。
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