"あやまち"からはじめませんか?



「ですね」


宇佐美くんは柔らかく笑うと、白い手袋をかけたままその手を差し出した。


??


「手を」


意味が分からぬまま、宇佐美くんの手の上に私の手を置くと、

その手を持ち上げてちゅっとキスを落とす。


「う、え……宇佐美くん!?」


「今日はよろしくお願いします。結衣お嬢様」


な、なにこれ……なんか恥ずかしい。

宇佐美くんにキスされた手をぱっと下げると彼は意地悪に笑った。


「そ、そんなことお客さんにやったらダメだからね!」


「もちろん。結衣さんだけですよ」


もう、今日の宇佐美くん。

服装もあってかいつもと違う雰囲気出してくるし……。

なんか落ちつかない。


「結衣さん、そろそろ」

「うん。行ってくる」



もうすぐ文化祭スタートの時間だ。


私はこの場を後にして放送室に向かった。




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