BLADE BEAST
らしくなく声が震えていた。

案外、ショックだったのかもしれない。




「流石に晄でも…分かってくれると思ったんだけどな」

「…」

「お気に入りだって。一番好きって言ってくれていたくらいなんだから、様子がいつもと違うって…分かってくれると思って、電話したんだけどな…」

「…」

「ほんと…いつもと変わらずに楽しそうにしてて、なんか…どうでもよくなっちゃって」




受話器の向こう側では甘く笑っている女の声もしたし、晄なんて私の声色に気づくような兆候すら感じられなかった。

晄は、私の何を見てるんだろう。

いなくても変わんないんじゃないかって。





「誰も、なーんにも見てくれない…」

「…」

「ほんとは…気づいてほしいよ…」

「…」

「もっと私を…見て欲しいよ…」

「…」



「────私は………」




その時。

また、甘いホワイトムスクの香りに包まれた。

黒髪は大きく宙を舞い、その隙間に入り込むようにして後頭部に回された大きな手のひら。

筋肉が程よくついた胸元に唇がぶつかり、冷たそうな外見とは裏腹に温かい体温を感じてドキリとする。
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