社長と同居しているだけです。結婚に愛は持ち込みません。
全てを知って欲しい

平日ということもあり、動物園はかなり閑散としている。
入り口のゲートから中に入ると、少し懐かしい感じの動物園だ。

ゲートでは、鳩が落ちている何かを突くように食べながら、出迎えをしてくれているようだ。
奥からは、キーキーというお猿さんのような声も聞こえる。
のどかな雰囲気に気持ちが落ち着く。

葵さんは何か目的があるように、動物園の中を進んだ。


少し広めの柵の中には、シマウマが3頭ほど食事に出された干し草を食べていた。

そして、その柵の中には、30代後半か40代くらいの男性が、大きな箒で掃除をしていた。

葵さんはその男性に向かって、突然声を掛けた。


「高橋アニキ!」


すると、その男性は驚いたように振り返り、葵さんを見つけると、満面の笑みで手をひらひらと振っている。


「あぁ…久しぶりだなぁ…葵じゃないか。」



その男性は掃除の手を止めて、ゆっくりと近づいてくれた。



「高橋アニキ、久しぶりに会いに来たよ。」



すると、その高橋アニキと言われる男性は、私の存在に気づいたようだ。



< 77 / 82 >

この作品をシェア

pagetop