想い出は珈琲の薫りとともに
2.due
パーティーの準備。それにまず必要なのは、それ相応の格好だ。
この留学中、こんな場所で開かれるようなパーティーに参加する予定など一切なく、もちろんそんな服は一着も持っていなかった。
そして、井上さんと安藤さんに連れて来られたのは、ホテル内のブティック。
こんな高級ホテル内を歩くにしてはかなり貧相な姿の私が現れても、店員は表情一つ変えないのがさすがプロだと感心してしまった。
「あの、井上さん。穂積さんのお好みは……」
私にそんなことがわかるはずもなく、一番わかっていそうな井上さんに尋ねてみた。
「亜夜さん。薫さん、と名前で呼んでください。さすがに婚約者なので」
「あ……。そうでした」
苗字で呼ぶ婚約者なんて、確かに変だろう。けれど、あの人を前に果たして名前を口にできるだろうか。緊張して声に出せないかも知れない。
「って、井上さんも亜夜ちゃんのこと名前で呼んでるじゃん!」
今頃気づいたのか、店の中をキョロキョロ見渡していた安藤さんがそう突っ込んでいた。
この留学中、こんな場所で開かれるようなパーティーに参加する予定など一切なく、もちろんそんな服は一着も持っていなかった。
そして、井上さんと安藤さんに連れて来られたのは、ホテル内のブティック。
こんな高級ホテル内を歩くにしてはかなり貧相な姿の私が現れても、店員は表情一つ変えないのがさすがプロだと感心してしまった。
「あの、井上さん。穂積さんのお好みは……」
私にそんなことがわかるはずもなく、一番わかっていそうな井上さんに尋ねてみた。
「亜夜さん。薫さん、と名前で呼んでください。さすがに婚約者なので」
「あ……。そうでした」
苗字で呼ぶ婚約者なんて、確かに変だろう。けれど、あの人を前に果たして名前を口にできるだろうか。緊張して声に出せないかも知れない。
「って、井上さんも亜夜ちゃんのこと名前で呼んでるじゃん!」
今頃気づいたのか、店の中をキョロキョロ見渡していた安藤さんがそう突っ込んでいた。