遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 家族は、いない。
「家族は、いなくて」
「一人暮らしか」
「いえ」

 何かを察した様子だ。亜由美にはある意味慣れたやり取りでもある。

「そうか……。では、なおさら一人には出来ないな」
 それはどういうことですか?と亜由美は聞こうと思ったのだ。

「亜由美ちゃん、入るよ?」
 しかし、先ほどカルテを作ってくるから、と一旦出ていった香坂が処置室の中に入ってきてしまった。

 鷹條はまだその場にいる。
「少し足を触るけどいい?」
「はい」
 しゃがんだ香坂は亜由美の足に触れる。

「痛っ……」
 先ほどと同じ方向に捻られると強く痛みが出るようだった。

「んー、確かに靭帯は大丈夫そう。多分骨まではいってないと思うが、念の為にレントゲンは撮っておこうか。鷹條、レントゲン室まで頼む」

「分かった」
え?


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