遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
 杉原亜由美は商社で経理をしている社会人二年目だ。
 経理部にはいろんな仕事があるが、亜由美はその中でも社内の経費関連の業務を担当している。

 両親が銀行勤めだったこともあって、お金について小さい頃からしっかり躾けられていたことは今の業務にも役立っているからそんな風に育ててくれた両親には感謝だ。

 今は二人とも存命してはいないけど。
 
 父は亜由美が高校生活の時に亡くなっている。
 とても仲の良かった母が追うようにして亡くなったのはその数年後だ。

 亜由美の大学卒業を見届けるように、就職してから亡くなった。
 だから今は一人で、親の遺してくれたマンションに住んでいる。

 大学卒業の日に『もう、親としてしてあげられることはないのねえ……』と感慨深そうに母が言っていたことが忘れられない。
 母が亡くなったのはそれからしばらくしてからだったから。

 もっと、教えて欲しかった。親としての義務だけではなくて、いろんなことを。


 た……例えばこんな風に駅で輩に絡まれたらどうしたらいいのかとかねっ!


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