遅刻しそうな時にぶつかるのは運命の人かと思っていました
5.雲の上の存在
 幸い友人は勤務中だったので、診てもらうことができた。

 本当は杉原のことは家族に後を託して帰ろうかとも思っていたのだ。

 けれど、家族は?と聞いた彼女の反応は微妙だったので訳ありなのだと察したのだ。

 杉原と名乗った彼女は確かにとてもしっかりして見える。それはしっかりせざるを得ないような環境にあるからなのかもしれなかった。

 とてもしっかりしていて、大人びた雰囲気の杉原。
 けれど時々見せる頼りなさや、そそっかしさが見た目とのギャップを感じてそれが鷹條にはとても愛らしく感じる。

 それに見た目ならば、その大人っぽく整った雰囲気は鷹條の好みでもあったのだ。

──かと言ってナンパできる立場ではないしな。
 鷹條の立場は微妙だ。

 治療を終えた帰り際、鷹條は友人である香坂に腕を引かれたのである。

「なんだ?」
「彼女、すごく可愛い。それにとても素直で、美人だし好みだ」
 なぜそんなことを俺に言うんだ?

「誘っていいか?」
「ダメだ」
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