こんなのアイ?





 克実からクリニックの話を聞いたのは彼が病院を辞める1ヶ月前、2月のことだった。何回か聞くうちに、数年前から人生の計画性をもって生きている克実の話に感化される。

 僕の現在はジュエリーデザイナーで安定はしているが、次の5月に契約更新をすると同じ環境で10年、40歳になるのは決定する。

「克実、僕がクリニックを手伝えるとしたらどういう方法がある?」
「どういう方法?何を考えてそんなこと言うんだ?」
「クリニックにかける克実の熱にやられてね…手伝えることあったら手伝いたい。デザイナーはどこでもどんな形でも出来るし、一度離れた方がいいデザインも浮かぶかもしれない。20年くらい後にひとつだけバーンと出してもいいしね。契約更新しないでおこうと考えただけで20年後のことがこうして考えられるんだ。現実になる、ならないは別として素晴らしいことだと思わない?」
「本気か?」
「Sure.」
「…愛実がいるから?」
「それはノーだね。克実がいるからというならイエス」
「それはどうも…医療行為が出来ないんだから受付事務しか仕事がないんだ」
「愛実の仕事?彼女一人でするの?」
「いや、それは無理。電話対応しているうちにも受付対応がいるだろうし休むこともあるだろうし誰か探すつもり…」
「僕に出来る仕事?」
「…資格のいる仕事ではない。愛実は資格を取っているが…」
「今から勉強すれば役立つ?」
「ブレント、本気なんだな?」
「もちろんだよ。もうワクワクしてるよ、新しい人生のスタートに」
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