こんなのアイ?
そうだ…つい先日断ったところだった。今日は平日、しかも月曜日の夜だ。さっと食べて帰ればいいかと思い承諾した。
「ここからだと…イタリアンか和食どっちがいい?」
「和食がいい」
「OK、こっち」
ブレントは私の腰辺りに手を添え歩き始める。
「切子は見なくて良かったの?」
「いつでも見られる。寄ってみて良かったよ、愛実と会えた」
帰宅を急ぐ人などとぶつからないように私をすっと引き寄せながら甘く‘会えた’なんて言う男は危険だ。10分くらい歩き彼が長身を屈めて暖簾をくぐるあとに続く。店内はいくつか半個室のようになっている和食屋さんだった。
「苦手なものなかったよね?少しずつ頼もうか?絶対食べたいものは?」
「今日はお魚の気分。内容はお任せしていい?」
「了解」
料理とブレントはビール、私はウーロン茶を頼む。
「切子はいいの買えた?」
「うん、プレゼントでペアのグラスを選んだの。素敵なものがいっぱいあって思ったより選ぶ時間が掛かった」
「いいもの見ると、自分のが欲しくなるよな」
「ブレントは使ってるの?」
「使ったり飾ったり」
そこで飲み物と料理が少し運ばれてくる。
「愛実、飲まないの?後からでも遠慮なく注文して」
「ありがとう。いただきます」
手を合わせてからお料理をいただく。
「ブレント、和食好き?」
「大好きだよ。数日続いても大丈夫」
「ふふっ…あっ…美味しい」
「それは…蛸の刺身の柚子わさび醤油仕立てだって」
「すごいね、完璧に漢字表記をクリアしている」
明るい彼につられ、お料理を食べる手もお喋りも進む。