こんなのアイ?
呼び止めたのはこちらへ数歩駆けてきたブレントだった。
「ちょっとだけ久しぶりだね、二人とも。そこで飲んでたの?」
ブレントがバーを指さして言い克実が、ああと答え
「ブレントは?会社の忘年会か?」
と少し後ろの10人ちょっとの集団を顎で示した。
「そうなんだ。すぐそこの店でね。愛実、来週の紗綾と一緒のパーティー、僕と一緒にタクシーで行こう。帰りも送るよ」
「うん…一人で行けるよ」
「土曜日だし事務所からじゃないだろ?迎えに行く」
「愛実、そうすれば?行く時からすでに暗い時間だろ?」
克実までそう言うので、わかったと言い
「呼ばれてるよ、ブレント。またね」
ブレントに克実は手をあげ、私は軽く手を振った。手をあげ踵を返した彼の向かう集団はさすがに高級ジュエリーを扱う方々の集まりというのか、女性はメイクもしっかりフルメイクでコートから覗く足元に見えるのはピンヒール。男性も高級そうなコートを身に纏った、師走の賑やかな通りでも目立つ集団だった。そしてその中心には一際目立つ悠衣がいる。
「上品なのに派手な集団だな」
克実の声に再び歩き出しながら頷く。
「ふふっ、うまいこと言うね。そうだよね…品があるだけでなく皆さん綺麗だから目立つのよね、きっと。12月の夜にパンツスタイルでもなくブーツでもなく、あんなパンプス寒くて無理だよ」
「美を追及すると、ああなるのか?」
「そうだね。こんな内側モコモコぬくぬくブーツにダイヤモンドは似合わないもの」
あまりの寒さに、克実と肩が触れ合うくらい引っ付きながら歩く姿を悠衣が見つめているとは知らなかった。