こんなのアイ?



 たくさんの飲み物の前でブラッドオレンジジュースをグラスに注いでいると紗綾が

「愛実、飲まないの?」

 とすでに空になったシャンパングラスを置きながら聞いてくる。

「うん、今日はちょっとね」
「調子悪い?」
「大丈夫、朝起きた時に喉が痛かっただけ。念のためほら、ビタミンC」
「ビタミン重要だもんね…私は…」
「ビールでしょ?」
「大当たり」
「紗綾がこのお店予約してくれたの?すごく美味しそうだね」
「うん、ピザは特にオススメ。ゆっくり何回かに分けて出してって言ってあるよ。熱々が食べたいから」
「楽しみ、ありがとう」

 ジュースとピザを持って一華と岳人さんの座るテーブルに行く。話上手な岳人さんの話を聞きながら、一華も美味しいとピザを頬張る…うん…美味しいんだろうね…ちょっと味がわかりにくい?…やっぱり風邪?
 
 あまり食が進まないのは人に気を使わせると思い、ジュースだけ持ち皆さんと少しずつ話して移動を繰り返し1時間ほどでブレントに声を掛けられた。

「愛実?具合悪いんじゃない?」
「ごめん、ちょっと喉がね…紗綾」
 
 すぐ近くにいた紗綾に声を掛ける。

「ごめん、やっぱり調子悪いから帰るね。年末に皆さんに風邪をうつしても悪いから…このままそっと失礼するね。会費で足りなかったら私にもちゃんと言ってよ」
「それは大丈夫。また誘うね。お大事に」
「ありがとう。今度ここのピザに連れてきてね」

 そっと2階を出ると一気に頭痛を感じ始める。気が張ってたのかな…家まではしっかりしないと。階段の手すりを持ちゆっくりと下り始めると

「愛実、送るよ」

 上からブレントの声と足音が聞こえた。
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