2.9次元?サラトガーナの王妃になる私の運命の糸は何色なのか
赤の屋敷
ニュースで見たことのある宮内庁管理の馬車に似ていると思った馬車を引く馬たちが目隠しをされていないのを見て思わず微笑んだのが、自分でも分かる。
「ミィ、どうした?」
「ここの馬はわき見などの心配のない、賢い子たちばかりだなと思って」
「ああ。ミィも安心して乗れるだろう?」
そう言いながら手を取ってくれたティムに支えられて中に乗り込むと、すぐにティムも隣に座りゆっくりと馬車は動き始める。
「どの子も優しく‘乗せてくれる’んです。とても‘私が乗っている’とは言えないですが」
「二日後に父のところへ行く時に自分で乗ってみるか?」
「お屋敷の外…大丈夫でしょうか?」
「問題なさそうに見えたが?それに馬たちは外の方が丁寧に乗せてくれる」
ティムは繋いだ私の手の甲を親指で擦りながら私を見た。
「そうなんですか?」
「ああ、屋敷では少々ふざけていることもあるからな」
「えぇ?私には分かりませんでした…初心者は真面目に乗せてくれているのかも」
「いや、試すようにふざけている。それでもミィは動じず、ニコニコと乗っていると、私だけでなくニルもアルも気づいている。だから外にも出られる」
「すごい…私…じゃなくって…ハインドもキダラもモンツもロスビエも…すごいですね」
「毎日世話して乗ってるミィの努力の成果だ」
そう言うティムの手は私の指を一本ずつ…指間も時折、くるくると撫で弄ぶ。
「今すぐ引き返したい…」
熱の籠った音を車内に落とした彼は
「誰にも見せたくなくて…皆に見せびらかしたい…そんな気分だ、ミィ」
と、私の指先に口づけたあと、鎖骨辺りにも口づけた。
「髪にも唇にも触れられないのはストレスだな…夜には存分に触れるよ。さあ、着いた…セスたちに言わせると出陣だ」