鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 彼はついさっき、自分たちが乗っている銀竜をセドリックと呼んだ。どうやら、心の中で呼びかけられているのか、竜自身の声は聞こえないまでも彼らの会話は自然と続いていく。

(すごい……竜騎士って竜と心の中で会話が出来るって本当なんだ)

 幼い頃から行動を細かく制限されて、必ず見張りが居たオデットには目を疑ってしまうような出来事の連続だった。

 美形の竜騎士に助けられて、空を飛び自由になる。今までの囚われの身からは考えられぬ、まるで絵空事のような現実だ。

「オデット。俺の部下たちがそろそろ小競り合いから、戻ってくる。今回の部隊は若い連中が多いから、何か言われるかもしれないが別に気にしなくて良い」

「竜騎士たちが……?」

 オデットがそう呟いて、下方へと向けたキースの視線を辿った。彼の部下の竜騎士たちが、生業の戦闘を終えて、気が抜けているのかゆっくりとした速度で思い思いの間隔を空けてこちらへ近付いてくる。

 そういえば、本来であれば戦闘の指揮を執る役目の団長である彼が単独でここに居る訳はなかった。

 単騎で危険な飛行をするなど、先程知った立場であれば許されぬことに違いない。

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