鎖に繋がれた月姫は自分だけに跪く竜騎士団長に焦がれてやまない
 オデットは赤い顔を俯かせてそう言えば、キースは何も言わずに手を強く握り締めた。

(キース様も、好意だと、嬉しい。私と、同じ気持ちなら……)

 キースも自分と同じ気持ちかもしれないと思うと、胸がいっぱいになった。

 もしそうだったとしたなら世界中にある他のもの何もかも、何も要らないと思えるのに。


◇◆◇


「オデット、少し待っていてくれ。着替えて来る。君も、着替えておいで」

 家に辿り着き、キースが階段を上がり部屋に向かおうとした時にオデットは彼の背中にある傷に気がついた。

「キース様! 背中に……傷」

 慌ててそう言い呆然としたオデットに、キースは苦笑して軽く頷いた。

「ああ……大したことはない。一人で複数を相手にすると、背中を取られないのは難しい。それに、見た目は大袈裟だがそれほど深い訳じゃない……エディの傷を、治してくれてありがとう。誰が見ても俺のものより、あいつの方が傷が深く酷かった。俺にとっては、あいつも可愛い部下の一人だ。オデットの心遣いが嬉しかった。君の貴重な能力を使ってくれて、本当にありがとう」

「キース様……」

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